愛着障害
2日前、15歳の少年が福岡市の商業施設で若い女性を刺殺した事件についての報道番組がありました。オープンして間がない商業施設で、15歳の少年が起こした残忍な事件は記憶に新しく、少年の生い立ちや事件の詳細を知りたいと思いました。
少年は小学生の頃から自立支援施設や精神病院を転々とし、事件を起こす前日に更生保護施設を抜け出して犯罪に至ったいうことでした。不定期刑の最長である10年から15年の懲役が確定し、少年は刑に服することになりますが、最後まで反省の言葉を口にすることはなかったそうです。
少年は、3歳児検診で注意散漫や多動、粗暴性が指摘され、保育園でも他児にかみついたり、保育士にけがをさせたりしたそうです。生まれてたった3年でそんな行動を起こしてしまうなんて、どんな家庭環境で育てられたのでしょうか?そんな小さな子を守ってくれる人は誰もいなかったのでしょうか?
少年の家庭環境は酷く、両親や兄から虐待を受けていたそうです。児童虐待には身体的虐待・心理的虐待・性的虐待・ネグレクトの4つが定義づけられていますが、全ての虐待を受けて育ち、専門家もこれほどひどい家庭環境はあまり見たことがないというほどだったようです。
施設や病院でも、薬物治療が主で、トラウマからの回復を支援する治療を受けていないことも指摘されていました。一番大切な母親から見捨てられた感覚が孤立や孤独感を深め、自暴自棄になってしまったのかもしれません。
少年は「ADHD(注意欠陥障害)」と診断されたと自分で供述していますが、ADHDであっても、周りの人の理解や支援があれば、社会に適応していくことは十分可能です。これから10年~15年間刑に服する間、誰も支えてくれる人がいなければ、また同じ犯罪を繰り返してしまうでしょう。
今回の事件で改めて愛着障害がもたらす影響の大きさや怖さを感じました。母親との愛着関係が築かれなければ、他人を信じられない、自分を信じることができないなど生涯にわたって大きな問題を抱えてしまいます。母親でなくても、心の支えになる人がいれば、なんの落ち度もない若い命が奪われる悲惨な犯罪は起きなかったかもしれません。
今回の事件も懲罰を与えて反省を促すという判決になりましたが、児童虐待の専門家は、それだけでは少年を変えることは難しいと言っています。このような犯罪をなくすためにどうすればいいのか、今までの方法でいいのか、重い課題を突きつけられています。
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